2025/2/28 世界のムナカタ
- 郷土美術館長
- 2月28日
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先日、未公開の棟方志功の昭和40年頃に録音されたテープ5本が新たに見つかったと朝のニュースで紹介されていました。棟方は、昭和31年、53歳のときに国際美術展「ヴェネチア・ビエンナーレ」において日本人初の国際版画大賞を受賞するなど、その独特の作風が国内外で高い評価を受け、世界のムナカタと称されました。昭和45年には文化勲章が授与されています。
棟方志功記念館が昨年3月に閉館、その後、作品は県立美術館に移すこととなり、その引っ越しに際して今回の発見があったようです。昭和の時代、版画家として一世を風靡した棟方志功、一昨年に東京国立近代美術館で回顧展が、昭和100年の今年は没後50年、記念館が閉館となり、その名を知らない世代がだんだんと増える中、再びその名をクローズアップする機会が生まれました。
以前、碌山館の記事の依頼があり所属する美術団体の会報に寄せたことがあります。美術館への取材、様々な資料を読んでいく中で、地元出身の工芸家山本安曇がいなければ「女」の像はブロンズにならず、遺族が石膏の原型を生家で保管し公開していなければ、地元の学校の先生方の目に触れることはなく、これがきっかけで多くの方に寄付を募った碌山館の建設に周囲は動くことはなかったと思われます。碌山の遺志が敷いたレールに多くの方々が乗り、碌山の精神を引き継いで碌山館ができたのだと思いました。
今回の録音テープの発見は、棟方志功記念館は閉館するも作品をその名を残そうとする棟方の遺志の力がそうさせたというか、作品の立場からすれば、棟方の思いが込められた作品が、今回の状況を生み出したと言えるのかもしれません。
“芸術は長く 人生は短し”
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